金子みすゞと詩

金子みすゞと代表的な詩についての解説

金子みすゞについての解説

作者の背景

金子みすゞ(かねこ みすず)は、20世紀の日本の詩人であり、その詩には子どもの視点から見た世界や自然への愛情が表れています。彼女は1903年に愛知県の豊橋市で生まれました。彼女は生涯を通じて詩作を続け、幼い頃から詩的な感性を持っていました。

作者の生い立ち

金子みすゞは幼少期から文学に親しんでおり、特に詩作に情熱を注いでいました。彼女は自然の中で育ち、身近な動物や植物と触れ合う中で詩の素材を見出していました。彼女の詩には、子どもの純真さや自然への愛情が豊かに表現されています。

こだまでしょうか

「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。

解説:この詩は、言葉の繰り返しによって人間の心情やコミュニケーションの難しさを表現しています。作者は子どもの無邪気な行動と後悔の感情を描き出し、読者に共感を呼び起こします。

私と小鳥と鈴と

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

解説:この詩は、自分と他者の違いを受け入れることの大切さを表現しています。作者は自分と小鳥、そして鈴を比較し、それぞれの個性を称賛します。

大漁

朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ。
浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。

解説:この詩は、大漁の喜びを描写しています。作者は朝焼けの美しい風景と大漁の豊富な漁獲を結びつけ、海の祝祭的な雰囲気を表現しています。

誰も知らない野の果で
青い小鳥が死にました
  さむいさむいくれ方に
そのなきがらを埋めよとて
お空は雪を撒きました
  ふかくふかく音もなく

人は知らねど人里の
家もおともにたちました
  しろいしろい被衣着て

やがてほのぼのあくる朝
空はみごとに晴れました
  あおくあおくうつくしく

小さいきれいなたましいの
神さまのお国へゆくみちを
  ひろくひろくあけようと

解説:この詩は、冬の雪景色を通して生と死の対比を描いています。青い小鳥の死と雪に埋められる様子が、生命の儚さと自然の美しさを表現しています。作者は人々が共に寒さを乗り越え、朝日が美しく輝く光景を描写し、新たな始まりを示唆しています。

星とたんぽぽ

青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼にみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ、
  見えぬものでもあるんだよ。
 
散ってすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼にみえぬ。
  見えぬけれどもあるんだよ、
  見えぬものでもあるんだよ。

解説:この詩は、見えないものの存在を感じさせる美しい表現です。作者は夜空の星や、昼間には見えないたんぽぽの根を通して、目に見えないけれども確かに存在するものの不思議さを描写しています。この詩は、自然の神

誰にもいわずにおきましょう。
朝のお庭のすみっこで、
花がほろりと泣いたこと。

もしも噂がひろがって
蜂のお耳へはいったら、

わるいことでもしたように、
蜜をかえしに行くでしょう。

解説:この詩は、静かな朝の風景を描写しています。作者は優しい気持ちで花の涙を観察し、その美しさを称えています。同時に、人々の噂や口コミが広まると、花が罰せられるようなイメージを示唆しています。詩には自然への敬意と、人間の行動の影響が描かれています。

蚊帳

蚊帳のなかの私たち
網にかかったお魚だ。
青い月夜の青い海
波にゆらゆら青い網。

なんにも知らずねてる間に
暇なお星が曳きにくる。
夜の夜なかに目がさめりゃ
雲の砂地にねていよう。

解説:この詩は、夜の蚊帳の中での静けさを描写しています。作者は蚊帳の中の自分たちをお魚にたとえ、青い月夜の中で揺れる海のようなイメージを生み出しています。そして、眠りにつく間に星が流れる様子を示唆し、夢の中に漂う幻想的な世界を表現しています。

夢売り

年のはじめに
夢売りは、
よい初夢を
売りにくる。
たからの船に
山のよう、
よい初夢を
積んでくる。

そしてやさしい
夢売りは、
夢の買えない
うら町の、
さびしい子等の
ところへも、
だまって夢を
おいてゆく。

解説:この詩は、新年の始まりに関連した夢のテーマを扱っています。作者は夢売りが良い初夢を届ける様子を描写し、船に山のような夢を積んでやってくる姿を想像させます。そして、夢売りが夢の買えない町の子どもたちにも優しく夢を届ける様子が描かれています。詩は希望と幸福の象徴としての夢の力を称賛しています。

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